2000年代のデスクトップOSS状況と、二宮町の海老原さん
Category: Tech
(書きかけの文章ですが、書きあげる時間が取れそうもないので、そのまま載せています)
私の記憶が確かなら・・・。
90年代後半、インターネットブームを支えるインフラとして、オープンソースソフトウェア(OSS)が広く活用され始めていました。LinuxにApache、SendmailといったOSSがその代表格でした。一方、デスクトップ分野で最も普及していたのは、マイクロソフト製品。OSならWindows、統合オフィスソフトならOffice、WebブラウザならInternet Explorerでした。インターネットを利用したりパソコンを利用したりする時、多くの人がこれらのマイクロソフト製品を使っていましたが、特定のベンダーに囲い込まれる弊害も目立ってきました。
2002年頃から、その状況が変わる可能性がでてきました。デスクトップ分野でもOSSが利用しやすくなってきたのです。
Linuxでは各種のデスクトップツールが充実してきましたし、KnoppixというCD-ROMから起動できるLinuxディストリビューションの登場で、パソコンにインストールしなくてもデスクトップLinuxを体験できるようになりました。統合オフィスソフトでは、OpenOffice.orgが登場して、Officeとの高い互換性とオープンなファイルフォーマットを実現しました。Webブラウザでは、Firefoxが登場し、インターネットのオープン性を強化しました。また、OpenOffice.orgとFirefoxは、Windowsでも動作するOSSとして、新しいOSSファンを生み出しました。
2006年、経済産業省の外郭団体であるIPAは、自治体でのデスクトップOSSの実証実験を行いました。中でも規模が大きかったのが、栃木県二宮町でした。全職員の約140台のデスクトップPCをLinuxに移行したのです。
- ニュース – 「財政改革中の町、ITコストもあらゆる手段で下げる」—役場全体でLinuxへ移行する二宮町の挑戦:ITpro
- 記者の眼 – 「全事務職員がLinuxデスクトップを使用している町役場」は実在する:ITpro
- ニュース – 「OpenOffice.orgユーザー会の協力でLinux移行の障害を乗り越えた」—栃木県二宮町 海老原慎一氏:ITpro
- ニュース – 「OSSデスクトップは自治体での実用に耐える」–IPAが導入実験の報告書を公開:ITpro
- ニュース – 【Open Source Revolution!】「日本はWeb 2.0のオープンソース活用競争をリードせよ」—経済財政・金融担当相 与謝野馨氏:ITpro
- 自治体におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての導入実証 ~ 栃木県二宮町および周辺市町におけるOSSデスクトップの導入と広域連携基盤の整備 ~ 導入実証実施成果報告書 pdf
- 栃木県二宮町役場全体のOSS化移行による実務実証プロジェクト : ソリューション・サービス | NEC
ちなみに、ITproの高橋さんが、積極的に取材してくれました。
これをきっかけに、自治体での導入事例も増えてきました。アシストが、企業向けのサポート事業をスタートさせました。
- LibreOfficeの導入事例 – The Document Foundation Wiki
- OpenOffice.org 採用事例 – Apache OpenOffice Wiki
- LibreOffice / Apache OpenOffice導入事例 | アシスト
2016年の現在、この10年で、オフィスソフトを取り巻く環境は大きく変わったと思います。デスクトップOSSはけっして広く普及していません。しかし、ベンダーの囲い込みから逃れるオープンなファイルフォーマットは、マイクロソフトも採用しました。統合オフィスソフトは、ブラウザベースでも提供されるようになり、マルチプラットホームが当たり前になりました。デスクトップPCも、用途によっては、スマホやタブレット/chromebookに置き換え可能になりました。
この流れを作ったのは、「ITにかかる費用を少しでも節約して,学校のサッシの修理に,公園の砂場の消毒に,住民サービスに回したい」という海老原さんたちの熱い思いと行動力でした。当時、私は、現地での導入研修やコミュニティとしてののサポートに携わっており、その想いの一端を垣間見ていました。自分たちの町を自分たちで良くしようと奮闘する姿は、素晴らしいものでした。その後は、SNSを通じて、活動の一部を見守る程度でいたが、引き続き積極的に行動を続ける様子は、これまた素晴らしいものでした。
その海老原さんが、お亡くなりになったということで、色々掘り起こしてみました。
私にとって、改めて、インパクトの大きなできごとでした。
心よりご冥福をお祈りいたします。