本当なの? 「マイクロソフト・オフィスを捨てられない3つの理由」

running with the seagulls
Photographer eschipul

Techinsight Japanに、マイクロソフト オフィスに関する記事が掲載された。

とても明快な記事である。OpenOffice.orgを例に移行できない理由として、次の3つを挙げている。

  • コスト削減にはそれほど貢献しない
  • マイクロソフト・オフィスの新インタフェースが優れている
  • OSと併せてサポートが受けられる

とくに、コスト削減については、”「手続き、手順記録型のマクロビルダー」がOpenOffice.orgには搭載されていない”、”ボリュームライセンスや未使用アプリの削減、バージョンアップを控えることにより、マイクソフト製品でもコストを抑えられる”、”ヘルプデスクの設置コストが必要になる”としている。

しかし、当サイトを読むようなOpenOffice.orgファンならお気づきのとおり、この説明にはいくつか間違いがあるように思う。

まず、OpenOffice.orgは手続き・手順記録型のマクロビルダーを搭載している。ユーザーの操作を記録して、マクロプログラムを作成できる。まあ確かに、記録された手順は呼び出した機能のリストの形式で記録されるので、それを改良して手続き型のプログラムにするのは難しい。しかし、ノベル版のOpenOffice.orgなら、VBAと互換性がある。

また、ボリュームライセンスや使わないアプリの削減で、ライセンスコストは低減できる点だが、その場合もゼロにはならない。すでに、多くの企業でボリュームライセンスのコストは、削減したあとでも大きなものになっている。そのことを考えると、これは十分に説得力があるように思えない。

さらに、バージョンアップを控えることでライセンスアップを抑えられるとしているが、本当にそうだろうか。あなたの会社は、10年後もMicrosoft Windows XPとMicrosoft Office 2003を使い続ける? 利用期間が延長されているとは言え、そこまで先にはサポートが打ち切られているだろう。そうなれば、企業のセキュリティ環境を考慮して、そのようなソフトウェアを使い続けることは難しい。

“ヘルプデスクの設置コスト”については、操作感が変わってしまったOffice2007でも同様ではないだろうか。

新バージョンのWindowsの操作性との親和性についても期待しているようだが、それは絵に描いたモチに過ぎないし、その環境への移行コストは考慮されていない(社内ユーザーの再トレーニングは、どうするのだろう?)。

結局のところこれは、乗り換えるか/乗り換えないかの問題だ。中長期的に見てMicrosoft製品を使い続ける、そのためのコストを支払うと決めていてのなら、それはそれでひとつの情報戦略だろう。一方で、できる限りコストのかからない環境に乗り換えようというのなら、早いほうがいい。

ただし、現在の環境、たとえばWindows XP/Office2003を永遠に使い続けていくことはできない。何かに移行する必要がある。それは、Windowsの新バージョン/Officeの新バージョンかも知れないし、最近成熟しつつあるLinuxデスクトップ/OpenOffice.orgかも知れないし、ブラウザベースのWebアプリかも知れない。

企業として必要なことは、このような新しい環境に移行するため、計画的に準備しておくことだろう。